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社労士によくある質問 労務管理 ①

よくある質問・FAQ 2024年7月7日

目次

 業務上の取扱いで不正を働いたと疑われる従業員がおり、まずは事情を聴く予定でしたが、本人が先手を打って「辞職願」を提出してきました。当社の就業規則では「届け出をして14日経過したとき」に退職となる、と定めています。
 しかし、本人は「辞職は、会社が退職の可否を検討する余地がないはず」との理由で即日退職を求めています。本人の言い分を認めるべきでしょうか。

回答: まず「辞職」とは、労働者が一方的に労働契約(雇用契約)を解約するものです。「依願退職」は従業員が退職を「願い出る」ものなので、通常は「合意解約の申出」とみなされます。
 辞職願は原則撤回不能ですが、退職願は「使用者の承諾の意思表示がなされるまでは撤回できる」と解されています。
 退職(辞職又は合意解約)は解雇には当たらないので、30日前の予告を定める労基法20条の適用はありません。ですので両者合意の上で即日解約も可能です。
 一方、民法では、期間の定めのない雇用(例としては正社員と呼ばれる従業員)は「解約の申し入れがあった日から2週間を経過することによって終了する」(民法627条1項)と規定しています。
 合意解約の退職願が提出された場合、会社は退職理由の確認や慰留を行った上で、最終的に承認の決定を行います。しかし、この「2週間」の制限を超えて承認を遅らせることはできません。
 これに対して、辞職願は、一方的な解約通知なので「話し合いの余地はない」のですが、だからといって「承認まで2週間は不要」ということではありません。
 「辞職願が撤回不能」とは、「相手方(会社)への意思表示の到達により、解約告知としての効力(2週間後に解約となる効力のこと)が直ちに発生する」という趣旨です。
 一般論としては「2週間の引き留め」が可能です。日程的にはハードですが、調査を行い懲戒処分を科す余地も残されています。
 実務的には、本人が転職先を確保し「明日から転職したい」と要求してくるケースもあり得ます。使用者が即日解雇できる(解雇予告除外認定を受ける)事由として「他の事業場へ転職した場合」が挙げられています。
 しかし、こちらも予告手当等が不要という意味で、逆に従業員から「即日解雇を要求」できる道理はありません。

 当社では正社員のほか、催事関係で日雇いの従業員も臨時雇用しているのですが、法定の帳簿は全ての従業員について作成しなければならないのでしょうか。

回答: 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3点は「法定三帳簿」と呼ばれ、備え付けを義務付けられています。
 「労働者名簿」は労働者の氏名や生年月日のほか、従事する業務や雇入れ日などを記載する必要があります。
 「賃金台帳」は個々の労働者に支払った賃金について、基本給や手当等の内訳や控除がある場合はその額等を記載しますが、賃金計算期間内の労働日数、労働時間数および時間外・休日・深夜労働をした時間を記載することも必要で、これらを確認できるようにするのが「出勤簿」です。
 頻繁に入れ替わりがある日雇いの従業員については、労働者名簿に作成義務はありませんが、賃金台帳・出勤簿は作成義務はあります。
 なお、記載すべき事項が具備されていれば、合わせてひとつの帳簿にすることもできるとされています。

 エンジニアの仕事をしているのですが、会社の望むような成果物を完成できないことが多いので、退職しようかと考えています。複数の知人に相談したところ、会社による不当解雇となるという意見と、仕事の完成を期待されている以上、結果を出せなければやむを得ないという意見があります。
 どのように考えればよいのでしょうか。

回答: 請負(業務委託)で仕事をする場合、完成品を納品できなければ契約を打ち切られることがありますが、労働契約を交わした雇用では、就業規則にない理由での解雇は労基法89条3号に違反します。ただし就業規則に定めがあっても、客観的で合理的でない社会通念上相当と認めれれない解雇は、権利の濫用として無効となります。
 請負契約は「仕事の完成」により報酬を受けるので、成果物が完成しなければ債務不履行となり発注者が契約を解除できるのに対して、雇用(=労働)契約は「労働の従事」について対価を受けるので、労務を提供すれば債務を履行したことになり、仕事が未完成でも契約に反しません。
 ですので雇用契約を結んでいた場合、使用者が雇用する労働者を勤務成績不良で解雇できるのは、教育・指導を徹底するなど手を尽くしても改善が全くみられないような、やむを得ないケースに限られることとなります。

 育休中の従業員がおり、直近の定期健康診断の受診から1年になろうとしています。育休中でも受診させる必要はあるのでしょうか。
 その必要がない場合は、育休後いつまでに受診させればよいでしょうか。

回答: 会社は原則として1年に1回、常時使用する従業員に対して定期健康診断を受けさせなければなりません。
 短時間や有期雇用の従業員も、
①無期雇用(有期のときは契約期間が1年以上の場合や、更新で1年以上となったり、又はなる予定だったりする場合を含みます)、かつ
②週の所定労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上
のときは実施する必要があります(概ね2分の1以上の者も実施することが望ましいとしています)。
 療養や育児などで休業している従業員については、定期健康診断の時期に休業中の場合、実施しなくても差し支えないとされています。
 ただし、休業終了後に速やかに実施しなければならないとしていますので、このケースでは職場復帰後に受診することとなります。

 このたび全社で、完全歩合制の導入を検討しています。歩合制(出来高払制)を採用する場合は、6割の賃金保障が必要と言われていますが、例えば当月の売上が低く保障給を支払う場合、この保障給と地域別最低賃金との関係はどのように考えればよいのでしょうか。

回答: 歩合制とは、本人の売上高に応じて賃金が変動する仕組みです。売上の多寡が賃金に直結するので、モチベーションアップにつながるといわれています。
 しかし、頑張っても成績が上がらないこともあり得ます。その場合、賃金額が著しく低くなるおそれがあります。完全歩合制であればゼロ円です。
 このため労働基準法では、「出来高払いの保障給」を定めています(労基法27条)。使用者は、「労働時間に応じ一定額の賃金の保障」をしなければなりません。
この保障給の金額は、「通常の実収金額と余りへだたらない程度の収入が保障するように定める」べき、とされています。その目安としては「平均賃金の100分の60程度が妥当」と解されています。
 保障給は労働時間に応じて支払うこととなっているので、月の労働時間の多寡に応じて月払いの最低金額が変動することになります。
 欠勤などにより労働時間が少ない月は、その時間数に1時間当たりの保障給を乗じて得た額を支払えば足ります。
 一方、最低賃金法では、所定内労働時間に対して、最低賃金額以上の賃金を支払うように義務付けられています。こちらも「労働者がその都合により所定労働時間の労働をしなかった場合は、それに対応する限度で賃金を支払わなくてよい」とされています。
 厚生労働省のパンフレットでは「オール歩合給制の場合も、1時間当たりの額が最低賃金額を下回らないようにする必要がある」と周知しています。
 ですので会社は、現実に働いた時間に対し、時間当たりで「保障給」「最低賃金額」のいずれも上回る金額を支払う必要があります。
 保障給分を上乗せした歩合給を支払ったとしてもそれが最低賃金額未満であれば、最低賃金法に違反します。

 定年退職した熟練職人を引き続き使用したいと考えています。能力が高く社内の事情にも通じていて、細かな指示をしなくても仕事をすることができますが、主に臨時の対応になるため月の就業日数・時間を一定にできません。
 そこで業務委託契約の形とする場合、問題点はあるのでしょうか。

回答: 業務委託契約は受託者を個人事業主とみなすため、委託者である会社は労基法上の制約を受けませんが、その内容が実質的に労働契約と異ならないのであれば労働契約となり、労働時間や賃金など一定の基準を満たさないと違法とされます。
 実質的に労働契約かどうかを判断するポイントは、受託者側の「労働者性」の有無です。委託者が受託者に指揮命令をせず、委託者からの依頼や指示にも受託者に諾否の自由があれば、労働者性が否定される可能性が高まります。
 加えて受託者が自らの危険負担で業務を行う対価と解せられる程度に報酬が高額で、委託者以外の業務に就くことも自由かつ可能であれば、さらに労働者性が弱まると考えられています。
 質問のケースでは、実質的に「労働者」とならないかをよく確認することが必要です。

 パートが正社員に登用され、1月からフルタイム勤務になりました。これまでは週4日の勤務だったため年次有給休暇(年休)の日数も少なかったのですが、正社員に登用された時点で不足分を追加しなければならないのでしょうか。
 当社は年休の付与は毎年4月なので、今年の4月から変更するということでもよいのでしょうか。

回答: 年次有給休暇(年休)は雇入れ日から起算して6ヵ月継続勤務した労働者に対し、以後1年ごとに一定日数を付与することが会社に義務付けられていますが、1週間の所定労働時間が30時間未満であって、かつ所定労働日数が週4日以下か年間216日以下の労働者についてはその日数に応じて、通常の労働者より少ない日数の年休を比例付与すれば足りるとされています。
 何日付与するかは、毎年年休を付与する「基準日」の時点における所定労働時間および日数で判断します。
 直前の基準日から次の基準日までに所定労働時間や所定労働日数の変更があっても、途中で付与日数を増減させる必要はなく、次の基準日から新しい所定労働時間及び日数に応じた日数を付与することとなります。
 一方、勤続年数は変更に関係なく通算して、付与日数を算出します。

 当社ではパートに適用する規則を、就業規則の別規程として定めていますが、就業規則を変更するときには通常、フルタイムの正社員と協議しています。
 パートに適用される規程の変更については、別途パートの意見を聴く必要があるそうですが、どのような手順で聴くのが望ましいでしょうか。

回答: 就業規則の作成や変更に当たっては、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数代表者の意見を聴くことが使用者に義務付けられています。
 パートに適用される規則を作成や変更する場合は、当該パートの意見が反映されることが望ましいとして、そのようなケースでは努力義務が課されています。
 パートで組織する労働組合がなければパートの過半数代表者から意見を聴取するものとされ、基本的に通常の就業規則の場合と変わりません。
 使用者の意向で代表者を選出することは禁止されているので、パート全員が集合して挙手による代表者の選出ができる日時を設定するか、一定の期間を定めて各々の出勤時に投票させる等の措置が必要になるでしょう。
 なお、パートから聴取した意見を就業規則の届出に添付することまでは義務付けられていません。

 同僚とのトラブルが絶えず、職場環境を悪化させている従業員を解雇予告手当無しで即時解雇したいのですが、「即時解雇は難しいし、解雇権の濫用にもなり得る」という話を聞きました。
 就業規則の懲戒規程にも当てはまるので、就業規則に基づいて解雇しても、会社に非があるとされてしまうのでしょうか。

回答: 労働者の即時解雇は、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払えば可能になりますが、労働者に帰責事由があれば手当の支払いは不要とされています。
 何が帰責事由に該当するのかという明確な規定は残念ながらありませんが、一例として「職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合」が挙げられています。
 しかし同時に労働者の職責や勤務状況等から総合的に判断し、解雇予告の必要性との均衡を失するものではないことも求められています。
 また、予告手当を支払う場合も含め、同僚の側にも問題があれば、当該従業員の解雇は客観的合理性・社会的相当性を欠き、使用者の権利濫用となり得ます。
 解雇権濫用は民法の不法行為として損害賠償請求の対象となる場合もありますので、一時の感情に流されずに冷静に判断し、極力解雇回避に努めるのが妥当です。

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