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社労士が解説:2023年度(令和5年度)最低賃金 賃上げを行うと助成金の対象に

助成金 2023年9月11日

2023年度(令和5年度)の最低賃金

 厚生労働省は、都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した2023年度(令和5年度)の地域別最低賃金の改定額(以下「改定額」)を取りまとめました。
 
 各地域の改定額は以下の表のとおりです。

都道府県改定後(円)改定前(円)引上げ額(円)
北海道96092040
青森89885345
岩手89385439
宮城92388340
秋田89785344
山形90085446
福島90085842
茨城95391142
栃木95491341
群馬93589540
埼玉1,02898741
千葉1,02698442
東京1,1131,07241
神奈川1,1121,07141
新潟93189041
富山94890840
石川93389142
福井93188843
山梨93889840
長野94890840
岐阜95091040
静岡98494440
愛知1,02798641
三重97393340
滋賀96792740
京都1,00896840
大阪1,0641,02341
兵庫1,00196041
奈良93689640
和歌山92988940
鳥取90085446
島根90485747
岡山93289240
広島97093040
山口92888840
徳島89685541
香川91887840
愛媛89785344
高知89785344
福岡94190041
佐賀90085347
長崎89885345
熊本89885345
大分89985445
宮崎89785344
鹿児島89785344
沖縄89685343
全国加重平均1,00496143
地域別最低賃金の改定額

最低賃金とは

 最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」があり、今回改定されるのは地域別最低賃金です。
 地域別最低賃金は、全ての労働者(特定最低賃金の適用を受ける者を含む)の賃金の最低額を保障するセーフティネットとして位置づけられています。
 対して特定最低賃金は、労使のイニシアティブにより決定されるものとして位置づけられており、地域別最低賃金より高い額をもって設定されます。
  
 一般的に「最低賃金」というと、地域別最低賃金のことを指すケースが多いです。

最低賃金の原則、決定方法

 地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して、都道府県労働局長が定めなければなりません。近年の引上げ額をみてみると、「通常の事業の賃金支払能力」が十分に考慮されていないのでは、と個人的には感じてしまいます。
 
 また、労働者の生計費を考慮するにあたっては、労働者が「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとされています。生活保護の受給額より低ければ、最低限度の生活を営むことが困難となるからです。

最低賃金の効力、罰則

 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で、最低賃金額に達しない賃金を定めたときは、その部分については無効とされます。この場合、無効となった部分は、最低賃金の額で賃金を定めたものとみなされます。 
 
 また使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、地域別最低賃金未満の賃金しか支払わないときは50万円以下の罰金に処せられます。

最低賃金の対象となる賃金

 次に掲げる賃金を除いた賃金が最低賃金の対象となります。

① 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
② 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
③ 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(残業手当など)
④ 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日勤務手当など)
⑤ 深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜手当など)
⑥ 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

 これら以外の、基本給」と「⑥を除く諸手当」の合計金額が、最低賃金額を上回らなければならない、ということになります。
 時給制の従業員は簡単に比較できますが、月給制の従業員の場合は、基本給と⑥を除く諸手当を「月平均所定労働時間」で割って時間当たりの賃金額を算出し、最低賃金額を上回っているかを確認する必要があります。

最低賃金が上がるのはいつからか

 答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から10月中旬までの間に順次発効される予定です。
 当事務所の顧問先に多い、足立区、荒川区など東京都内の事業者は10月1日から、草加市、八潮市、越谷市、三郷市など埼玉県内の事業者も、同じく10月1日から効力が発生します。
 
 これは支給日を基準にして考えるのではなく、労働日を基準にして考えます。具体的には、月末締め翌月25日支給の会社を例にとると、10月支給分(9月1日から9月30日まで労働分)からではなく、11月支給分(10月1日から10月31日まで労働分)から、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
 
 また、派遣中の労働者については、その派遣先の事業場の所在地について決定された地域別最低賃金が適用されますので、注意が必要です。

賃金引上げ、設備投資による業務改善助成金

 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内しかない会社が、事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、かつ、設備投資等(設備投資、コンサルティング、人材育成、教育訓練など)をおこなう場合、その費用の一部を助成する「業務改善助成金」を受給できる可能性があります。
 ただし、今年10月から順次発効される地域別最低賃金の改定額に対応して事業場内最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げる必要があります。
 
 当事務所においては、助成金申請のご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。

今後の最低賃金の行方

 岸田文雄首相は8月31日、新しい資本主義実現会議で「2030年代半ばまでに最低賃金を1,500円まで引き上げる」という目標を発表しました。消費者物価の高騰もあって、おそらく引き上げ額はこれからさらに拡大していくものと予想されます。
 体力の厳しい中小企業も賃上げに対応してもらうために、様々な種類の助成金が用意されるはずです。
 当ブログでもいち早く情報を提供しますので、引き続きご参考下さい。
 

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